北九州市立大学基盤教育センターの中尾泰士教授による「データサイエンス特別授業」がスタートしました。
この授業は全3回シリーズで構成されており、第1回目のテーマは「分布と可視化」。
高校1年生を対象に、データの見方や社会とのつながりを学ぶ実践的な内容が展開されました。
【グラフで伝える力を育てる】
授業の冒頭では、企業の売上データを使ってグラフを描くワークを実施。円グラフ、棒グラフ、折れ線グラフなど、表現方法によって伝わるメッセージが変わることを体験しました。
中尾教授は「何を伝えたいかによって、最適なグラフは変わる」と説明。生徒たちは手描きでラフなグラフを作成しながら、データの見せ方の工夫を学びました。
【実験で学ぶ確率と分布:「ビュフォンの針」】
次に行われたのは、数学の古典的な確率実験「ビュフォンの針」。紙に線を引き、クリップを落として、線と交わる確率を調べることで円周率に近づくという内容です。
生徒たちは10回の実験を繰り返し、結果を度数分布表やヒストグラムにまとめることで、分布の概念を体感。正規分布と非正規分布の違いについても学びました。
【社会を映すデータ:貧困率と所得分布】
授業の後半では、OECDの統計データをもとに、貧困率や所得分布について考察。日本の子ども(17歳以下)の貧困率は11.5%、高齢者(66歳以上)は20%と、年齢によって大きく異なる現状が示されました。「なぜ高齢者の貧困率が高いのか?」「他国と比べて日本はどうか?」といった問いを通じて、データから社会課題を読み解く力を養いました。
【ジェンダー格差をデータで見る】
最後に取り上げられたのは、男女間の所得格差。2022年の日本のジェンダー所得ギャップは21.3%。1980年には41.7%だったことから、改善傾向はあるものの、依然として課題が残ることが明らかになりました。生徒たちは、正規・非正規雇用の違いや、同一労働同一賃金の法律についても学びながら、データが示す現実と向き合いました。
【次回予告】
第2回では、さらに深く「データから課題を発見し、解決策を考える」探究型の学びに進みます。高校生が社会と向き合う力を育むこの授業、今後の展開にもぜひご注目ください。


